海外

2025.12.11

アメリカ(米国)|電子渡航認証(ESTA)の大規模な制度変更へ - モバイルアプリ必須化・SNS情報提出義務化等(2026年~)

2025年12月10日、米国税関・国境取締局(CBP)は、連邦官報(Federal Register)において、ビザ免除プログラム(VWP)で利用される電子渡航認証システム(ESTA)および入出国記録(Form I-94)に関する 大規模な制度変更案 を公表しました。

この変更は、国家安全保障の強化と渡航者の本人確認プロセスの現代化を目的としており、2026年以降段階的に実施される予定です。主な変更点として、ESTA申請のモバイルアプリ必須化ソーシャルメディア情報の提出義務化生体認証データの拡充などが含まれています。

米国連邦官報(Federal Register)|Agency Information Collection Activities; Revision; Arrival and Departure Record (Form I-94) and Electronic System for Travel Authorization (ESTA)

主な制度変更案(2026年以降の段階的実施を想定)

現在CBPは、2026年2月9日までパブリックコメント(一般からの意見募集)を受け付けており、提出されたコメントは、最終的な制度設計に反映される可能性があります(下記内容は草案のため変更される可能性があります)

制度変更はパブリックコメントの審査後、2026年以降段階的に実施される見込みです。
(下記草案の具体的な実施や開始日は、今後の連邦官報での追加公告により発表される予定です)

 1. ESTA申請のモバイルアプリ必須化

現在のESTA申請は、専用ウェブサイト または ESTAモバイルアプリのいずれかで行うことができます。

制度変更後は、ESTAウェブサイトでの新規申請機能が廃止され、ESTAモバイルアプリ(ESTA Mobile)のみでの申請 を検討しています。(ウェブサイトは 情報提供 および ESTAステータス確認 のみに使用される予定)

なぜモバイルアプリからのみの申請に変更するのか?
  • ウェブサイトでは低品質のパスポート写真アップロードにより、顔認証スクリーニングの回避が可能となっている
  • ICパスポートの電子チップ(e-Chip)認証がウェブサイトでは実施できない
  • 詐欺的な第三者ウェブサイトによる高額請求被害が多発している
  • モバイルアプリでは、NFC(Near Field Communication)技術を用いたパスポート電子チップの真正性確認、顔写真のリアルタイム取得(ライブネス検出)、顔認証による本人確認が可能

2. ソーシャルメディア情報の提出義務化

現在のESTA申請時のソーシャルメディア情報の入力は「任意(オプション)」となっています。

制度変更後は、過去5年間に使用したソーシャルメディアのアカウント情報(プラットフォーム名とハンドルネーム/ユーザー名)の提出必須 を検討しています。

対象となるソーシャルメディアプラットフォーム例
Facebook、Instagram、Twitter(X)、LinkedIn、TikTok、YouTube、Snapchat、Redditなど
なぜソーシャルメディア情報の提出を義務化するのか?
  • 2025年1月に発令された大統領令14161号(Protecting the United States From Foreign Terrorists and Other National Security and Public Safety Threats)に基づき、国家安全保障上のリスク評価を強化するため。デジタルアイデンティティの確認により、身分詐称や安全保障上の脅威となる人物・組織とのつながりを検出することを目指しています。

3. セルフィー(自撮り写真)の提出必須化

現在のESTAモバイルアプリでは既にセルフィーが必須ですが、ウェブサイトでは提出不要となっています。

制度変更後は、すべてのESTA申請において、申請者の顔写真(セルフィー)の提出必須 を検討しています。
(第三者による代理申請の場合も、申請者本人のセルフィーが必要)

技術的な仕組み
  • ライブネス検出技術により、過去にアップロードされた写真ではなく「リアルタイムの生きた人物」であることを確認
  • CBPが保有する顔画像データベースと照合し、本人確認を実施
  • パスポートの電子チップ内の顔写真とセルフィーを比較照合

4. 追加情報項目(高価値データフィールド)の収集

大統領令14161号 および 2025年4月のメモランダム(Updating All Forms to Collect Baseline Biographic Data)に基づき、以下の追加情報が収集される予定です(実現可能な範囲で段階的に導入)

これらの追加項目は段階的に導入される予定であり、すべてが直ちに収集となるわけではありません。
CBPは「実現可能な範囲で(when feasible)」としています。

追加収集情報
  • 個人情報:過去5年間に使用した電話番号、過去10年間に使用したメールアドレス、アップロードした写真のIPアドレスおよびメタデータ
  • 家族情報:両親・配偶者・兄弟姉妹・子供の氏名、生年月日、出生地、居住地、過去5年間の電話番号
  • 職業情報:過去5年間に使用した職場の電話番号、過去10年間に使用した職場のメールアドレス
  • 生体認証情報(実現可能な範囲で):顔認証データ、指紋、DNA、虹彩スキャン

5. CBP Homeアプリによる自主的出国報告機能(VSRE)

I-94要件の対象となる外国人が、米国から出国する際に、CBP Homeモバイルアプリを使用して自主的に出国を報告できる機能の導入を検討しています。特に陸路での出国時に出国記録が明確に残り、次回入国時に前回の滞在が適法であったことを証明するものとなることが期待されます。

報告に必要な情報
  • パスポート または 渡航文書の情報
  • 顔写真(セルフィー)
  • 位置情報(ジオロケーション)

参考リンク

米国連邦官報(Federal Register)公告
Agency Information Collection Activities; Revision; Arrival and Departure Record (Form I-94) and Electronic System for Travel Authorization (ESTA)

米国税関・国境取締局(CBP)
U.S. Customs and Border Protection

米国国土安全保障省(DHS)ビザ免除プログラム
Visa Waiver Program

大統領令14161号(2025年1月)
Executive Order 14161 - Protecting the United States From Foreign Terrorists

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