更新日:2024.04.03
シェンゲン協定とは?シェンゲンビザの要否など注意するポイントを知りたい
シェンゲン協定(Schengen Agreement)では、加盟国域内での出入国審査を廃止しており、域外からの入国者でシェンゲンビザ所持者または、ビザ取得を免除された方は、原則としてすべての加盟国への自由な移動が認められます。こちらのページでは、シェンゲン協定加盟国への渡航で、注意するべき8つのポイントを解説します
- 1. シェンゲン協定加盟国(Schengen area)
- 2. ビザ(Visa)
- 3. 滞在目的(Purpose of visit)
- 4. パスポート(Passport)
- 5. 滞在期間(Duration of stay)
- 6. 海外旅行保険(Overseas Travel Insurance)
- 7. 入出国審査(Immigration)
- 8. ETIAS(エティアス)
シェンゲン(Schengen)とは、
ルクセンブルグ、フランス、ドイツの国境三角地帯、モーゼル川のほとりに位置するルクセンブルクの小さな村の名前で、シェンゲン協定が締結された場所です。
シェンゲン協定(The Schengen Treaty)は加盟国相互の通行自由化と手続き簡素化を目的とした共通滞在協定で、1985年6月14日にルクセンブルク・シェンゲン村のモーゼル河畔に停泊していたMSプリンセス・マリー・アストリッド号(MS Princesse Marie-Astrid)で調印され、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクのEU5ヵ国による政府間プロジェクトとして始まりました。
1990年6月19日にも同地でシェンゲン協定施行協定(Schengen Implementation Treaty)が署名され、協定参加国の間での国境検査を撤廃することを規定しました。
1)シェンゲン協定加盟国(Schengen area)
2024年4月1日現在、EU加盟国(アイルランド、キプロスを除く)、アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインを含む 29カ国 がシェンゲン協定に加盟しています。
クロアチアのシェンゲン協定加盟について|日本外務省海外安全ホームページ
なお、ルーマニアと ブルガリア については、2024年3月31日に空路および海路の国境制限の撤廃をすることで合意しており、陸路の国境制限の解除に関しては議論を継続するという事です。
ブルガリア、ルーマニア|シェンゲン協定に加盟(2024年3月~)
ブルガリア|空路及び海路国境へのシェンゲン協定適用開始について(3/31から)
ルーマニア|空路及び海路国境へのシェンゲン協定適用開始について(3/31から)
2)ビザ(Visa)
シェンゲン協定国の一つの大使館及び総領事館で発給されたビザを所有すれば、短期での観光、出張、訪問(最長6ヵ月間に90日)を目的としてすべての加盟国への自由な移動が認められます。
シェンゲンビザの申請 は、訪問国の大使館/総領事館で申請しなければなりません。
複数のシェンゲン協定加盟国を訪問する場合は、主たる目的の滞在国の大使館/総領事館で申請を行う必要があります。
主たる滞在国がない場合は、最初に訪れる国の大使館/総領事館で申請しなければなりません。
日本国籍の方は、後に記載されている 渡航目的、パスポート要件、滞在期間、必要書類の携行等の全ての条件を満たせばシェンゲン加盟国への無査証(ビザなし)滞在が可能です。
シェンゲンビザの要否については、欧州議会が定めた「Regulation (EU) 2018/1806」の“Annex I”にビザ取得が必要な国が、“Annex II”に180日の期間のうち90日以内の滞在でビザ取得が免除されている国 がそれぞれ記載されています。
Interactive map on visa requirements|欧州委員会
なお、二国間で査証免除取極がある場合は、そちらが優先される場合があるため各国のビザ要否要件も併せてご確認ください。
3)滞在目的(Purpose of visit)
短期滞在でビザが免除になる滞在目的は、観光、業務(会議・商談等)、知人訪問、外交・公用 となります。
あらゆる180日の期間内で90日以内の滞在期間であっても、現地で報酬を得る 就労はビザが必要 になります。
4)パスポート(Passport)
2013年07月19日より,シェンゲン領域における短期滞在目的での渡航者は有効期間がシェンゲン加盟国からの出国予定日から3か月以上残っており,10年以内に発効されたパスポートを所持している必要があります。
シェンゲン協定加盟国間の移動は出入国審査がないので、パスポートを提示する必要はありませんが、昨今の国際情勢から、旅行者に対する身分確認・審査が抜き打ちで行われることがあり、パスポートを所持していなかったために、官憲により身柄を拘束された事案が発生していますので、パスポートは常に携行してください。
<シェンゲン領域内においてパスポートを紛失した際の手続きについて>|日本外務省海外安全ホームページ
5)滞在期間(Duration of stay)
シェンゲン国境規則の改正により,2013年10月18日から「あらゆる180日の期間内で最大90日間」に改正されました。
入国を予定している日から180日遡り、その期間内の滞在日数が90日を越えていないかご確認ください。
いずれの場合でも帰国後3ヶ月が経過すれば、新たな180日間の期間内における最大90日の滞在日数として計算を開始することができます。
滞在日数については必ずご自身で計算してください。当社で滞在日数の計算・確認は致しません。
シェンゲン加盟国での滞在可能日数の計算は下記のShort-stay Visa Calculator(英文)を用いて計算ができます。
Short-stay Visa Calculator・短期滞在計算器
利用方法は USER MANUAL(英文)にてご確認下さい。
USER MANUAL FOR THE SHORT-STAY "SCHENGEN" CALCULATOR(PDF)
シェンゲン協定圏内に許可されている期間を超えて滞在した場合(オーバーステイ)、不法滞在になり、罰金やその後の入国禁止、シェンゲンビザの申請に制限がかかる可能性があります。
日本国籍の方がシェンゲン協定国内にあらゆる180日の期間内で90日以上の長期滞在をする場合は、滞在目的国のナショナルビザ(Dビザ)の取得が必要です。
ナショナルビザの申請は、渡航先、渡航目的によって異なりますが、原則現地政府機関発行の許可証等が必要になります。
なお、二国間で査証免除取極がある場合は、そちらが優先される場合があるため各国の入国要件も併せてご確認ください。
オーストリア はシェンゲン協定加盟国ですが、日本との二国間ビザ免除取極が優先され、無査証で6か月以内の滞在が許可されます。
日本とオーストリアの査証免除取極はオーストリアでのみ有効な取極であるため、90日間を超えてビザ無しでオーストリアに渡航する場合は、オーストリアで入国審査を受けるために、シェンゲン域内の国を経由せずにオーストリアに乗り入れている航空便を利用してください。
また、ビザ無しで90日間を超えて滞在した後にオーストリアから出国する場合も、オーストリアにおいて出国審査を受けるために、シェンゲン域内国を経由しない航空便を利用してください
6)海外旅行保険(Overseas Travel Insurance)
海外旅行保険に入っていないと、時には数千万円にものぼる高額な医療費・移送費を全て自己負担しなければなりませんので、万一に備え、十分な補償内容の海外旅行保険に加入しておくことを強くお勧めします。
国や地域によっては、突然事故に遭い、また病気や怪我をして病院に搬送されても、実費あるいは保険等による治療費の負担が保証されないと、診察や治療が受けられない(断られる)ことがあります。
また医療水準や衛生事情により、その国では必要な治療が受けられず、他国や日本への緊急移送が必要となる場合もあります。
クレジットカード付帯の保険は、予め以下の確認が必要です。
契約内容が不明な場合は、クレジットカード会社にお問い合わせください。
【付帯の有無の確認】
カードを所有しているだけで保険が有効となる 「自動付帯」と、そのカードで旅行代金を支払わないと有効にならないものや、年間一定額以上クレジットカードを使用していないと有効にならない「利用付帯」があるため付帯されるかの確認が必要です。
【補償内容の確認】
クレジットカード付帯の保険は、補償が十分でない事が多いので補償内容の確認が必要です。
傾向として、疾病死亡の補償がない、賠償責任の補償が少額、治療・救援者費用の補償が少額 等の場合があります。
特に治療・救援者費用は、海外での医療費は高額になるため補償額では賄えない可能性が高いです。
【保険証券・付保証明書の確認】
渡航先で、海外旅行保険の加入を証明する為に、保険会社が発行する英文保険証券、またはクレジットカード会社が発行する英文付保証明書を依頼する必要があります。
発行を依頼してから手元に届くまで、概ね1~2週間程度かかりますので余裕を持って準備する必要があります。
【キャッシュレス治療の確認】
保険会社が提携している医療機関での治療費を自己負担することなく治療を受けられるキャッシュレス治療サービスが受けられるのか確認しておきましょう。
保険会社毎に提携している医療機関が異なります。
海外旅行保険の加入を義務付けている国
シェンゲン協定加盟国の中には、入国に際して海外旅行保険の加入を義務付けている国があります。
渡航国の要件を満たした補償のある海外旅行保険に加入していないと、入国が認められなかったり、罰金を支払う必要があります。
これらの国に渡航する際は、提示を求められた際にすぐに提示できるように常に保険証券の携帯が必要です。
その他のシェンゲン協定加盟国は、ビザ免除での入国は、海外旅行保険の加入を推奨としてしていますが、ビザ申請する際は海外旅行保険証券の提出を求めています。
国 | 必要な補償 |
エストニア Estonia |
滞在期間を全てカバーしてEUR30,000以上の死亡補償が必要 クレジットカード付帯の場合、本人名義の英文保険証券が必要 |
チェコ Czech Republic |
滞在期間をカバーするもので治療・傷害・死亡の各項目において、それぞれEUR30,000相当額以上の補償が必要 クレジットカード付帯の場合、本人名義の英文保険証券が必要 |
ハンガリー Hungary |
滞在期間をカバーするもので死亡時の保証がEUR30,000以上必要 クレジットカード付帯の場合、本人名義の英文保険証券が必要 |
ブルガリア Bulgaria |
滞在期間をカバーし、EU内で有効なEUR30,000以上の補償が必要 クレジットカード付帯の場合、本人名義の保険証券が必要 |
ラトビア Lativia |
滞在期間をカバーし、治療・救援の補償総額がEUR30,000以上必要 クレジットカード付帯の場合、本人名義の英文保険証券が必要 |
リトアニア Lithuania |
入国時に保険証券(原本)が必要 保険証券はリトアニア語、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語のいずれかで記載されていること 滞在期間を全てカバーしてEUR30,000以上の補償があり緊急移送を含む医療サービスが含まれていること クレジットカード付帯の場合、本人名義の英文保険証券が必要 |
シェンゲン協定国以外 | |
イラン Islamic Republic of Iran |
滞在期間を全てカバーする英文保険証券が必要 入国時に未加入の場合はイランの到着空港で加入が必要 |
キューバ Republic of Cuba |
滞在期間を全てカバーして、キューバにおいて承認されている保険会社(国際的な業務を行っており、アメリカ系以外の会社)であること クレジットカード付帯の場合、本人名義の英文保険証券が必要 |
7)入出国審査(Immigration)
シェンゲン協定加盟国内では、最初の到着地で入国審査があり、最後の出国地で出国審査が行われます。
このため、経由国では入国スタンプを押されることは原則的にありません。
最初に到着するシェンゲン協定加盟国で押されるはずの入国スタンプが押されずに、現地で密入国を疑われるなどのトラブルが発生していますので、シェンゲン領域内に入国の際は、入国スタンプが押印されていることを必ず確認してください。
入国手続き 【協定国を経由して協定国へ移動】
初めに入国した協定国のみで入国審査をします。税関検査は目的地で行います。
例)成田 → パリ → アテネ
【経由地のパリで入国手続き、目的地のアテネで税関検査】
出国手続き 【協定国から協定国を経由して移動】
最後に出国する加盟国のみで出国審査をします。税関検査は目的地で行います。
シェンゲン領域内からの出国審査時、加盟国での累積滞在期間がチェックされます。
例)アテネ → パリ → 成田
【経由地のパリで出国手続き、目的地の成田で税関検査】
8)ETIAS(エティアス)
2025年(予定)より、ヨーロッパの渡航で日本などのビザが免除されている国民は、ヨーロッパ諸国へ入国する前にオンラインで承認された「ETIAS(European Travel Information and Authorisation System:エティアス)」の取得が必要です。
当初2020年に導入予定でしたが、システムの構築等が難航して度々延期となっています。
ETIASは、入国者の情報を事前にかつ正確に共有することで、テロや犯罪の抑止、難民の大量流入を抑制する目的で導入され、オンラインで申請者のパスポート情報、連絡先、渡航情報等の入力と申請費用(18歳以上はEUR7)のクレジットカード決済が必要になります。
以下の30か国に入国するビザ免除の渡航者は、ETIASを取得する必要があります(2025年開始予定)
以下の国籍の方はETIASの事前取得が必要です(2025年開始予定)
EU加盟 (27ヵ国) |
シェンゲン加盟 (27ヵ国) |
ETIAS対象 (30ヵ国) |
€ ユーロ (20ヵ国) |
|
アイスランド Iceland |
シェンゲン | |||
アイルランド Ireland |
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アゼルバイジャン Azerbaijian |
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アルバニア Albania |
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アルメニア Armenia |
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アンドラ Andorra |
*ETIAS | |||
イタリア Italy |
シェンゲン | |||
ウクライナ Ukraine |
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ウズベキスタン Uzbekistan |
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英国 United Kingdom |
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エストニア Estonia |
シェンゲン | |||
オランダ Netherlands |
シェンゲン | |||
オーストリア Austria |
シェンゲン | |||
カザフスタン Kazakhstan |
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キプロス Cyprus |
加盟予定 | |||
ギリシャ Greece |
シェンゲン | |||
キルギス Kyrgyz Republic |
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クロアチア Croatia |
シェンゲン | |||
コソボ Kosovo |
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サンマリノ San Marino |
*ETIAS | |||
ジョージア Georga |
||||
スイス Switzerland |
シェンゲン | |||
スウェーデン Sweden |
シェンゲン | |||
スペイン Spain |
シェンゲン | |||
スロバキア Slovakia |
シェンゲン | |||
スロベニア Slovenia |
シェンゲン | |||
セルビア Serbia |
||||
タジキスタン Tajikistan |
||||
チェコ Czech Republic |
シェンゲン | |||
デンマーク Denmark |
シェンゲン | |||
ドイツ Germany |
シェンゲン | |||
トルクメニスタン Turkmenistan |
||||
ノルウェー Norway |
シェンゲン | |||
ハンガリー Hungary |
シェンゲン | |||
バチカン市国 Vatican City |
*ETIAS | |||
フィンランド Finland |
シェンゲン | |||
フランス France |
シェンゲン | |||
ブルガリア Bulgaria |
*シェンゲン | |||
ベラルーシ Belarus |
||||
ベルギー Belgium |
シェンゲン | |||
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ Bosnia and herzegovina |
||||
ポーランド Poland |
シェンゲン | |||
ポルトガル Portugal |
シェンゲン | |||
北マケドニア North Macedonia |
||||
マルタ Malta |
シェンゲン | |||
モナコ Monaco |
*ETIAS | |||
モルドバ Moldova |
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モンテネグロ Montenegro |
||||
ラトビア Latvia |
シェンゲン | |||
リトアニア Lithuania |
シェンゲン | |||
リヒテンシュタイン Liechtenstein |
シェンゲン | |||
ルクセンブルク Luxembourg |
シェンゲン | |||
ルーマニア Romania |
*シェンゲン | |||
ロシア Russia |
*ETIAS:アンドラ、サンマリノ、バチカン市国、モナコは、シェンゲン協定加盟国ではありませんが、協定加盟国から陸路入国になるためETIAS取得が必要になります。
*シェンゲン:ブルガリア、ルーマニアは2024年3月31日より空路、海路のみ国境制限が撤廃されましたが、陸路の国境制限は継続中です。